【FutureBass】プラックの作り方|シンセの基礎と応用
今回はプラックの作り方についてです。
「シンセの基礎知識」についての記事も書いていますので、そちらも合わせて読んでみてください。
下の画像はプラックパート全体のスナップショットです。
今回も一番上のトラックを使って各セクションごとに色分けをしました。
「ブレイクダウン」「ビルドアップ」「ドロップ」
合計6トラックにそれぞれシンセを立ち上げて作っています。
和音で鳴らすタイプの「プラック」
まずは、和音で鳴らすタイプのプラック です。
下の画像の明るいところが「ブレイクダウン」で、2つのトラックをレイヤーして音色を作っています。
この2つのプラックパートは、「低音パート」と「高音パート 」で、それぞれ役割を分担しています。
はじめに、「低音部」の方から見ていきましょう。
低音パート
音色はこのようになっています。
これを単音で鳴らすとこのような音色です。
設定は、下の画像のように矩形波を使ったセッティングで、次第に減衰していくタイプの音色になっています。
もう少し、詳しく見ていきましょう。
オシレーター について
メインの矩形波と、もう1つ、1オクターブ上で鳴らしている矩形波で加算合成させています。
さらに、それぞれのオシレーターは5本ずつユニゾンし、ほんの少しデチューンもかけています。
そうすることで、倍音を増やして豊かな音色にすることができます。
ユニゾンの数は必要最低限に
ここで注意する点は、ユニゾンを多くするとたくさんの倍音が出るかもしれませんが、増やしてもそれほど効果的では無い場合があるので、聴いて確認しながら必要最低限の数にとどめておくことです。
ユニゾンの数を増やしすぎるとパソコンの処理が追いつかなくなって重くなる場合があるので、そういったことも気をつけていきたいところですね。
アンプリチュードエンベロープについて
各オシレーターの「LEVEL」にかけているエンベロープの設定は、アタックが最速で、サスティーンレベルが「0%」で一般的なプラックの設定です。
ディケイタイムで設定した時間をかけてレベルが「0」に向かっていきます。
そして、「serum」ではエンベロープのカーブの調整もでき、今回は思いっきりきつめのカーブをかけています。
こうすることで、歯切れの良いプラックにすることができます。
各オシレーターの「LEVEL」にかかっているエンベロープの設定。
フィルターエンベロープについて
フィルターの「CUTOFF」にかけたエンベロープも先ほどと似たような形になっています。
- フィルター側の設定
「RES」(レゾナンス)にも少し動きをつけています。この設定は鳴った瞬間にレゾナンスがもち上がり、すぐに引っ込むような設定です。
こうすることで、アタック感を感じさせながらも、レゾナンス臭さは感じさせない、そんな設定にしています。
エフェクターについて
今回はシンセ内のディレイを使っています。
プラック系の音色と「ディレイ」は相性が良く、音に奥行きを作り出すことができます。
ディレイ
ディレイタイムの設定は「1/8 Dot(付点8分音符)」にしました。
この設定は、どう決めていくかというと、特に決まりごとは無く、いろいろな設定を試して聴いて、しっくりきたものを選んでください。
ディレイのタイプは「PING-PONG」を選びました。
音が左右交互に鳴る設定で、広がりを持たせたいときに使います。
高音パート
音色はこのようになっています。
単体で聞くとこんな感じです。
設定は、「低音パート」とよく似ていますが所々違うので、説明していきます。
オシレーター について
メインのオシレーターに矩形波を使い、もう1つのオシレーターも矩形波で、1オクターブ上で鳴らしています。
共に3本でユニゾンさせています。デチューンは音程が狂って聴こえる手前ギリギリまでずらしています。
アンプリチュードエンベロープ について
ここの設定は「低音パートのアンプリチュード エンベロープ」の設定とほとんど一緒なので説明は省略します。
違いがあるのは、フィルターエンベロープなので、そちらを解説いたします。
フィルターエンベロープについて:カーブの設定大事
フィルターエンベロープはディケイタイムを短めに、さらにカーブを思いっきりかけて、かなり急激な変化をつけています。
アタック感を出すためのに、このようにしています。
フィルターの設定は、
適度に高音域を残しておきたかったので、角度があまりついていないものを使っています。
ピッチエンベロープについて:アタック感を作ることもできる
ピッチにもエンベロープをかけています。
これもアタック感を出すためのもので、「ENV3」を使って「CRS」にかけています。
仕組みとしては、高い音程の音を急激にピッチを下げるとアタック感のある音になります。
擬音で表現するなら「チュン」といった音でしょうか。(笑)
この手法は、シンセで「キック」を作るときなど、アタック感が重要な音色にも見られる手法です。
フィルターについて
中音域以下は「低音パート」のプラックだけで十分に感じたので、「EQ」を使って 1kHz 以下をローカットしています。
その他にエフェクターは使っていませんが、後から考えてみると「低音パート」のように「ディレイ」をかけてもよかったかなと思いました。
ベル系の音色:その1
先ほどと同じ「ブレイクダウン」のセクションです。
装飾的なリフの演奏に「ベル」の音色を使っています。
音色はこのようになっています。
設定は今までにもあったような設定で、矩形波を1オクターブ上でずらして鳴らしています。
このように、今まで見てきたプラックの音作りとほとんど変わらないのですが、 ここで特記するべきポイントは「LFO」を使っていることです。
LFOについて
「LFO」を使って「PWM」を揺らし、音色を変化させています。
LFOを使ってPWMを揺らした場合と、揺らしていない場合の音色を聴き比べてみてください。
- LFOあり
- LFO無し
2つ目の「LFO無し」のバージョンは透明感があってこれはこれでとても綺麗な音色ですが、他のトラックと混ぜたときにあまりにもさっぱりし過ぎる印象を受けたので、このような処理をしました。
実験として、それぞれの音色で他のトラックと混ぜてみたので、雰囲気の違いを感じてみてください。
- LFOあり
- LFO無し
聴き比べてみるとどっちもカッコ良いので最終的には好みの問題ですが(笑)
もし、「LFO無し」の方で進めていく場合は、もう少し低音が出るようにローカットの位置を下げ、存在感を出してやるとしっくりきそうですね。
ちなみに、最終的にEQの設定はこのようにしています。
ベル系の音色:その2
先ほどのベルの音色とは少し違うものも使っています。
下の画像の明るく表示してあるところの「ビルドアップ」のセクションで、この音色を使っています。
基本的に2つのトラックをレイヤーして作っている音色です。
途中かもう1トラックが入ってきますが、これはアレンジに関するところなので、詳しい説明は省略しようと思います。
一旦、音色を確認してみてください。
ここでも基本的な考え方は一緒で、「高音パート」と「低音パート」で分けています。
まずは「低音パート」から見ていきましょう。
低音パート
音色はこのようになっています。
セッティングは、このように「サイン波」と「三角波」を使った音色になっています。
このパートの特徴は「ノイズ」をレイヤーしているところです。
ノイズを使って高音域成分を強化
ノイズを加えることで他の楽器とはまた違う雰囲気で高音域成分が強化されます。
ちなみに、ノイズ単体ではこのような音色になります。
それから、オシレーター の「OSC A」「OSC B」の他に、もう1つ「SUB」も使っているところも、このパートの特徴といえます。
「OSC A」「OSC B」だけでは物足りなさを感じたので、サイン波を1オクターブ下で鳴らす設定にしました。
高音パート
音色はこのようになっています。
設定は、このようになっています。
音色の作り自体は今までどうりで、特別お伝えすることは特にありません。
ポイントとなるのは、DAW側の操作になります。
それは「高音パート」と「低音パート」の発音するタイミングをずらしています。
発音のタイミングをずらす
Ableton Live 10 ではトラックの右側にその設定を調節するところがあります。
この「ズレ」によって、どれだけの違いがあるのか実験してみましょう。
❶ 「高音パート」を13ms分早く鳴る設定(完成版)
❷ 2つのパートを同時に鳴らした場合。
最後に追加の実験として
❸ 「高音パート」を13ms分遅く鳴る設定
それぞれだいぶ違いが感じられるのがよくわかると思います。
発音タイミングが同時の場合は、詰まったような変な聴こえ方がするので、もうひと工夫が必要かもしれません。
そして、3番目の「高音パート」の方を遅らせるパターンは、面白味があって良いですよね。場合によってはこっちの方が良い場合もありそうです。
まとめ
今回は「プラック の音色を作り」についてお伝えしました。
要点をまとめると
今回もたくさんのポイントがあるのでとっつきやすいところから作曲に取り入れてみてください。
もし、よくわからない所や、質問などがありましたら、コメントいただけると助かります。
それでは!