【FutureBass】シンセベースの作り方|シンセの基礎と応用
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/img_6521.jpg?fit=1024%2C768&ssl=1)
前回は、シンセについて基礎的なことから、オシレーター やモジュレーターについての説明をしていきました。
それでは早速、FutureBassを制作していくための実践的な制作手順をお伝えしていきます。
とはいえ、FutureBass といっても様々なスタイルがあるので、
「ぼくなりの作曲について」ということでお伝えしていこうと思います。
シンセの知識を実際の作曲で活かしていく
それでは、短い曲を作ったので、これをモデルに見ていきましょう。
ダンスミュージックではいくつかのパートがあります。
主に、
・ベース
・プラック
・リード
・パッド
・シーケンシャル
・アルペジオ
これらが代表的ですね。
まずは、トラックの全体をみて見ましょう。
トラックの全体像
こちらが、今回作った曲の全体です。
![](https://i1.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-2.png?fit=1024%2C450&ssl=1)
BPMは150に設定しました。
大きく3つのセクションからなっており、
・ブレイクダウン(Aメロ)
・ビルドアップ(Bメロ)
・ドロップ(サビ)
に分かれています。
(一番上のトラックを、セクションごとに「赤紫色」「紫色」「エメラルドグリーン」で配色してみました。)
今回は、イントロらしいものは作っていません。
今回使ったトラック数は、合計63トラックになりました。
意外とトラックの数が多くなってしまったなぁといった印象。
バストラック(複数のトラックを1つにまとめるときに使うトラック)をたくさん使っているからかもしれません。
それでは本題に入ります。
ベース
下の画像はベースパートのスナップショットです。
それぞれのセクションごとに、ベースパターンを変えて、曲全体に変化を付けています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-4-1.png?fit=1024%2C366&ssl=1)
そして、音色ごとにトラックを分けて使っています。
そのほうが作曲やミックスの時のトラック管理をシンプルに進めることができます。
一本のトラックで作ろうとすると、オートメーションを、たくさん書いてあげる必要があったり、作曲時にスピーディーに物事を進められなかったりする可能性があるからです。
プラック系ベース:その1
下の画像の一番上の段、明るく表示しているところが「ブレイクダウン」のセクションです。
メインのベーストラックで、プラック系のベースにしています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-11.png?resize=1024%2C366&ssl=1)
ブレイクダウン(0:01〜0:27)でプラック系のベースを使っています。
音色はこんな感じで、音量が減衰していくタイプのもの。
セッティングは、このようになっています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-10.png?resize=896%2C725&ssl=1)
プラック系の音色を作る場合とほぼ同じようなセッティングで、発音した瞬間が最大音量で、次第に音量が「0」になる音色です。
波形は「矩形波」と「ノコギリ波」を加算合成させており、共にフィルターに送っています。
フィルターのカットオフもエンベロープを使ってモジュレーションしています。
フィルターのカットオフにかけたエンベロープは「サスティーン・レベル」が「0%」に設定してあるので、「ディケイ・タイム」で設定した時間をかけてレベルが「0」になります。
プラック 系の音色では、この「ディケイ・タイム」の設定がとても重要になってきます。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-10-2.png?resize=301%2C258&ssl=1)
プラック系の音色は「ディケイタイム」の設定が重要です。
さらに、「serum」では、各パラメータの間を調整できる丸が表示されているので、カーブの曲がり具合をそこで調整することができます。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-10-3.png?resize=301%2C258&ssl=1)
ここでカーブを調整することができます。
プラック系ベース:その2
下の画像の明るく表示されたところが「ビルドアップ」のセクションで、先ほどの「ブレイクダウン」で使われたベースの音色を少し変えて使っています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-12.png?resize=1024%2C366&ssl=1)
音色はこんな感じです。
セッティングはこのようにしています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-14.png?resize=900%2C727&ssl=1)
最初に紹介した「ブレイクダウン」のセッティングとほぼ一緒なのですが、カットオフにかけたエンベロープの設定が少し違っているのが確認できると思います。
鳴らす音域が変わってしまったので、フィルターエンベロープのセッティングを少し変えてあげる必要がありました。
それから、「プラック系ベース:その1」のベースでは「サスティーンレベル」を「0%」にしていましたが、こっちの方では「61.52%」です。
ここでは連続して続くベースフレーズだったので、毎回レベルが「0」になっていたのではブツブツ途切れすぎているような感じがしたので、このような設定にしました。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-15.png?resize=301%2C262&ssl=1)
フィルターエンベロープの設定画面。サスティーンレベルを上げている。
・サイドチェーン
それから、音量が急に下がっているところがあるのがわかると思いますが、これは「サイドチェーン(ダッキング)」と呼ばれている手法です。
下の図はDAWの画面を簡略化したもので、キックとベースの関係を図にしています。
キックが鳴ってるときにベースの音量が下がる仕組みを取り入れています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-17-2.png?resize=688%2C307&ssl=1)
DAW画面を図にしたもの。下のグラフはベースの音量を表しています。キックが鳴った瞬間にベースの音量が下がるようにしています。
今回のこの曲では、この仕組みを、曲全体に取り入れています。
キックと混ぜて聴いてみると、ベースの音量の変化はあまり感じないと思います。
全体で聴いたときのサイドチェーンの聴こえ方を、確認しみてください。
こういった手法を取り入れる理由として、音量レベルをオーバーさせること無く、キックとベースの迫力を表現することが可能になります。
そして、もし、音量がオーバーしてしまうと「クリップ」という現象が起こり、耳障りなノイズが発生してしまいます。
このノイズのことを「クリッピングノイズ」と呼びます。
さらに、この「サイドチェーン」の手法を押し進めて、音楽表現の手法としても使われています。
下の動画では、ベース以外の楽器にもサイドチェーンがかけられて、めちゃくちゃかっこいい曲に仕上がっています。
サイドチェーンについては以前にちょっとした記事にしているので、参考にしてください。
そして最後に、「ドロップ」のセクションです。
持続型のベース
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-13.png?resize=1024%2C366&ssl=1)
ここではベースの中でも「高音」と「低音」の2つのトラックをレイヤーしています。
このセクションは「ドロップ(サビ)」なので一番盛り上がるところです。
今までのセクションとは雰囲気を変えていきたかったので、このような持続的なベース音を使って曲にコントラストを付けてみました。
- 「高音」を担当しているトラックの音色。
セッティングは、このようになっています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-16-1.png?resize=900%2C725&ssl=1)
このセッティングは、サスティーンレベルが最大に設定されており、鍵盤を押し続けても音量が減衰しない持続型の音色です。
リード系の音色に使われるセッティングに似ています。
どうにか理想の音に近付かないかと、試行錯誤を続けているうちに、ノイズを混ぜてみたり、ディストーションをかけてみたり、さらにサチュレーションやマルチバンドコンプを使ったり、いろいろ試した結果、このような形で落ち着きました。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-16-2.png?resize=899%2C74&ssl=1)
serumにあるディストーションを使って歪みを加えています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-16-3.png?resize=1024%2C230&ssl=1)
サチュレーターとマルチバンドコンプレッサーを使っています。
ここの「Multiband Dynamics」の「OTT」という設定は、とても優秀なので、「OTT」と呼ばれる単体のプラグインが開発されてフリーのVSTとして配布されています。
- Multiband Dynamics 「OTT」
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Ableton Live の「Multiband Dynamics」
- xferrecords 「OTT」
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xferRecords がフリーで配布している「OTT」
それでは、もう1つの「低音」を担当しているトラックの説明をしていきます。
- 「低音」を担当しているトラックの音色。
セッティングはこのようになっています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-19.png?resize=900%2C726&ssl=1)
メインの波形は矩形波を使っています。さらにパルス波を使い、PWMとLFOを使って少し揺らし、音色に変化を付けています。
ピッチベンド
ピッチベンドは下方向にしか使っていませんが、「-12」(1オクターブ下)の幅で設定しています。
そして、ピッチベンドのエンベロープはこのように書いています。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-16-4.png?resize=1024%2C325&ssl=1)
ピッチの動きを書いているところ。
今回は直線(等速)ですがカーブをつけると、違った印象になるので、曲に合わせて調整してあげます。
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-24-e1582688635710.png?resize=115%2C200&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-25-e1582688294571.png?resize=119%2C203&ssl=1)
カーブを入れると印象が変わります。曲の雰囲気に合わせて調整する。
最後に、「高音」「低音」2つのトラックを合わせたところを聴いてみましょう。
レイヤーしたときの音の厚みや、ピッチベンドの動きなどに注目して聴いてみてください。
サブベース
一番下にある「サブベース」と呼ばれているベースをレイヤーしています。
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一番下のトラックがサブベース
「サブベース」は低音域を補うためのもので、今回は「三角波」と「矩形波」を加算合成、それぞれにフィルターをかけて作っています。
音色はこのようになってます。
(低音なので、環境によっては聞き取りにくい場合があります。)
下の画像はそのときのセッティングです。
そして、全てのセクションで、サブベース「無し」と、「有り」の音源を用意したので、聞こえかたの違いを確認してみてください。
- ブレイクダウンの「サブベース」の有無の比較
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-6-1.png?resize=512%2C183&ssl=1)
- ビルドアップの「サブベース」の有無の比較
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-7.png?resize=512%2C183&ssl=1)
- ドロップの「サブベース」の有無の比較
![](https://i0.wp.com/midi-bass.com/wp-content/uploads/2020/02/synth-fundamental-2-8.png?resize=512%2C183&ssl=1)
まとめ
今回はベースについて解説いたしました。
要点をまとめると、
⚫︎ 波形の大枠を作るエンベロープについて
⚫︎ フィルターを使って音色を変化させる
⚫︎ サイドチェーンの仕組み
⚫︎ マルチバンドコンプレッサーの紹介
⚫︎ サブベースについて
それから、音色ごとにトラックを分けて使う理由と方法が、今回の記事で理解していただけたのではと思います。
もしわからないところや、説明が足りないところ、質問などありましたら、コメントいただけると助かります。
ちなみに、今回メインで使っているシンセは「Serum」です。
画面が飽きてしまったのでスキンを変更して使っています。
気分に合わせて着せ替えて使ってみるのも楽しいですね。^^
それから2020年4月30日までSerumのセールやってるみたいです。
値段はほぼそのままに、プリセットがバンドルされていました。
それでは!